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2026.06.04

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健診結果を放置しないためのミニ講座

慢性腎臓病について

健診でeGFR低下・尿蛋白・尿潜血を指摘された方へ

健診で「腎機能が少し低下しています」「eGFRが低めです」「尿蛋白が出ています」「尿潜血があります」と言われても、特に症状がないため、そのまま様子を見ている方は少なくありません。

「年齢のせいだろう」
「水分をあまり飲んでいなかったからだろう」
「前にも少し悪いと言われたけれど、困っていない」
「腎臓は悪くなると怖いと聞くけれど、何をすればよいのか分からない」

そう感じる方は多いと思います。

また、インターネットで腎臓病について調べると、「腎不全」「透析」などの言葉が出てきて、不安になってしまう方もいらっしゃいます。
しかし、健診で腎機能低下や尿蛋白を指摘されたからといって、すぐに透析が必要になるわけではありません。

慢性腎臓病、CKDは、初期には自覚症状が出にくい病気です。
だからこそ、健診で見つかった小さな変化を放置しないことが大切です。

怖がりすぎる必要はありません。
一方で、「症状がないから大丈夫」と考えすぎず、今の腎臓の状態を確認し、来年の健診で良い結果につながるよう一緒に整えていくことが大切です。

 

慢性腎臓病と慢性腎不全は同じですか

慢性腎臓病と慢性腎不全は、似た言葉ですが、まったく同じ意味ではありません。

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが低下した状態や、尿蛋白など腎臓の異常が続いている状態を広く含む考え方です。
つまり、比較的早い段階の腎臓の異常も含まれます。

一方で、慢性腎不全という言葉は、腎臓の働きがかなり低下し、老廃物や水分、電解質などを体の中で十分に調整しにくくなった状態を指して使われることが多い言葉です。

健診で「eGFRが低い」「尿蛋白がある」と言われた方が、すぐに慢性腎不全や透析に直結するわけではありません。
大切なのは、どの段階なのか、原因は何が考えられるのか、これから進行を抑えるために何ができるのかを確認することです。

インターネットなどの記事だけを読んで不安を強める前に、まずは健診結果をもとに現在の状態を一緒に確認していきましょう。

 

慢性腎臓病(CKD)とはどのような病気ですか

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが低下した状態や、尿蛋白など腎臓の異常が続く病気です。

腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として体の外へ出す働きをしています。
また、体の水分や塩分のバランスを整えたり、血圧の調整にも関わっています。

腎臓の働きが低下しても、初期にははっきりした症状が出にくいことがあります。
そのため、健診の血液検査や尿検査で初めて気づくことが少なくありません。

 

eGFRとは何を見る数値ですか

eGFRは、腎臓がどれくらい血液をろ過できているかを推定する数値です。

健診では、血液中のクレアチニンという項目に加えて、年齢や性別などをもとにeGFRが計算されます。
eGFRが低いほど、腎臓のろ過する力が低下している可能性があります。

ただし、eGFRは年齢、筋肉量、体格などの影響も受けます。
そのため、1回の数値だけで判断するのではなく、以前の結果と比べてどう変化しているか、尿蛋白があるか、糖尿病や高血圧症があるかなどを合わせて確認することが大切です。

健診でeGFRの低下を指摘された場合は、「年齢のせい」と決めつけず、一度経過を確認しておきましょう。

 

尿蛋白とは何を意味しますか

尿蛋白とは、尿の中に蛋白が多く出ている状態を示す所見です。

腎臓では、まず糸球体という細かい血管の集まりで血液がろ過され、原尿が作られます。
その後、尿細管で水分や電解質、ブドウ糖、アミノ酸など、体に必要な成分の多くが再吸収され、不要なものが尿として排出されます。

健康な腎臓では、アルブミンなどの蛋白は尿の中に多く出ないように保たれています。
尿蛋白は、運動後、発熱、脱水などで一時的に陽性になることもあります。
一方で、繰り返し陽性になる場合や、糖尿病・高血圧症・腎機能低下を伴う場合は、腎臓に負担がかかっているサインとして注意が必要です。
糖尿病や高血圧症などにより糸球体の細い血管に負担がかかると、本来は尿に多く出ないはずの蛋白が漏れ出し、尿蛋白として検出されることがあります。

特に糖尿病がある方では、通常の尿蛋白検査で異常が目立つ前の段階から、尿中の微量アルブミンを確認することが大切です。
微量アルブミン尿は、早期の糖尿病性腎症に気づくための重要な手がかりになります。
当院でも、糖尿病の方には、腎症の早期発見と進行予防のため、尿中微量アルブミン検査を定期的に実施しています。
血糖値やHbA1cだけでなく、腎臓への影響が出ていないかを一緒に確認することが大切です。

尿蛋白や微量アルブミン尿は、腎臓からの大切なメッセージです。
健診で尿蛋白を指摘された方、糖尿病で腎臓への影響が心配な方は、放置せず、再検査や経過確認を行いましょう。

 

血尿を伴う場合は、原因の見極めも大切です

健診で腎機能低下や尿蛋白とあわせて、尿潜血、つまり血尿を指摘されることがあります。

血尿といっても、原因はひとつではありません。
腎臓そのものに由来する血尿もあれば、尿管、膀胱、前立腺など、尿の通り道に原因がある血尿もあります。

腎機能低下がある方で血尿も認める場合には、腎臓病としての評価と同時に、泌尿器科的な評価も大切になります。
当院では、生活習慣病だけでなく、泌尿器科をもうひとつの専門分野としている立場から、血尿の原因についても、複数の視点から確認しています。
腎臓由来の血尿なのか、それ以外の血尿なのかを見極めることで、必要に応じて周辺病院と連携しながら、適切な診療につなげていきます。

健診で尿潜血を指摘された方、尿蛋白と尿潜血の両方を指摘された方、腎機能低下と血尿をあわせて指摘された方は、健診結果をご持参のうえ、一度ご相談ください。

 

慢性腎臓病は症状がないことも多い病気です

腎臓が悪いと聞くと、むくみ、だるさ、息切れ、尿の異常などを心配される方もいます。

しかし、CKDの初期には症状が出ることは多くありません。
自覚症状がないため、健診で指摘されても「元気だから大丈夫」と考えてしまいやすい病気です。

症状がないことと、腎臓に負担がないことは同じではありません。
腎機能の低下や尿蛋白、尿潜血が続いている場合は、早めに原因や経過を確認することが大切です。

 

腎臓病と生活習慣病は深く関係しています

慢性腎臓病は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病と深く関係しています。

血糖が高い状態が続き、糖尿病性腎症が進行すると、糸球体の血管にダメージが生じるようになり、尿中に微量のアルブミンが認められるようになります。
また、血圧が高い状態が長く続くと、腎臓の血管が硬くなり、腎硬化症と呼ばれる病態につながることがあります。

実際に、慢性腎不全から血液透析が必要になる原因として多いのは、糖尿病性腎症や腎硬化症です。
このことからも、腎機能低下と生活習慣病は切っても切り離せない関係にあります。

また、脂質異常症は動脈硬化と関係し、血管全体の健康に影響します。
腎臓は、言わば細い血管が集まった臓器でもあるため、血管を守ることは腎臓を守ることにもつながります。

健診結果を見るときは、eGFRや尿蛋白、尿潜血だけでなく、血糖、HbA1c、血圧、LDLコレステロール、中性脂肪なども合わせて確認することが大切です。

 

腎臓を守るために大切なこと

腎臓を守るためには、特別なことだけが必要なわけではありません。
日々の生活習慣と、必要に応じた治療を続けることが大切です。

特に重要なのは、血圧管理です。
高血圧は腎臓に負担をかけるため、家庭血圧を含めて血圧の状態を確認していきます。

糖尿病がある方は、血糖管理も大切です。
HbA1cだけでなく、腎機能や尿検査も合わせて経過を見ていきます。

塩分のとりすぎにも注意が必要です。
ただし、急に厳しい食事制限をするのではなく、続けられる形で少しずつ整えていくことが大切です。

薬についても確認が必要です。
血圧や糖尿病の薬の中には、腎臓を守る目的で使われるものもあります。
一方で、痛み止めや市販の一部の薬、サプリメントなどは、腎機能によって注意が必要な場合があります。

自己判断で中止したり、逆に自己判断で追加したりせず、健診結果や普段使っている薬を一緒に確認していきましょう。

 

「年齢のせい」と思う前に

eGFRは、血清クレアチニン、年齢、性別などをもとに計算されるため、年齢とともに低下して見えることがあります。
そのため、「年齢のせいだから仕方ない」と思われる方もいます。

確かに、加齢による変化はあります。
しかし、年齢だけでなく、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、喫煙、肥満、薬の影響などが関係している場合もあります。

大切なのは、今の数値がどの程度なのか、以前と比べてどのくらい変化しているのか、他の検査結果と合わせて確認することです。

「年齢のせい」と決めつける前に、一度健診結果を見直してみましょう。

 

数字だけでなく、生活全体を見ながら考えます

腎機能の数値が悪いからといって、すぐに腎臓専門医へ紹介すればよいというわけではありません。
もちろん、専門医療機関との連携が必要な場合は、適切なタイミングで紹介することが大切です。

一方で、腎機能低下の背景には、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、体重、食事、運動、飲酒、喫煙、薬の影響など、さまざまな要素が関わっています。

当院では、腎臓の数値だけを見るのではなく、生活習慣病と患者さんのライフスタイルを含めて、総合的に診療することを心がけています。
無理な食事制限や一方的な指導ではなく、その方の生活に合わせて、続けられる方法を一緒に考えていきます。

 

血液透析施設での診療経験から

院長は、血液透析施設でも診療を行っていました。
血液透析が必要となった患者さんの診療に関わる中で、腎臓病が進行してからの治療だけでなく、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の段階から、できるだけ早く介入することの大切さを実感してきました。

もちろん、すべての腎機能低下が透析につながるわけではありません。
しかし、腎臓は一度大きく悪くなると、元に戻すことが難しい場合があります。

だからこそ、不安に思われた時点で早めに相談していただき、腎症の進行をできるだけ抑えるために、今できることを一緒に考えていきたいと思っています。

 

専門医療機関との連携が必要な場合

腎機能の低下が進んでいる場合、血尿を伴ったり高度の尿蛋白がみられる場合、急に数値が悪くなった場合などは、周辺の病院と連携して診療を行うこともあります。

専門医療機関へ紹介することは、決して悪い状態が確定したという意味ではありません。
原因を詳しく調べたり、今後の悪化を防ぐために方針を確認したりするための大切な連携でもあります。

当院では、生活習慣病として継続的に診ていく部分、腎臓専門医と連携すべき部分、泌尿器科的な確認が必要な部分を見極めながら、患者さんにとって必要な診療につなげていきます。

 

「来年の健診まで様子を見る」前に

健診でeGFR低下や尿蛋白、尿潜血を指摘されても、症状がなければ「来年まで様子を見よう」と考える方は多いと思います。

その気持ちは自然です。
ただ、腎臓は症状が出にくい臓器です。

来年の健診まで様子を見る前に、今年のうちに一度状態を確認しておくことをおすすめします。
早めに確認することで、経過観察でよいのか、生活習慣の見直しが必要なのか、薬の確認が必要なのか、専門医療機関との連携が必要なのかを判断しやすくなります。

 

健診でクレアチニン高値や、尿蛋白、尿潜血を指摘された方へ

慢性腎臓病は、怖がりすぎる必要はありません。
一方で、症状がないからといって放置してよい病気でもありません。

また、尿潜血を伴う場合には、腎臓だけでなく、尿の流れ道に原因がないかを確認することも大切です。

大切なのは、今の腎臓と尿の状態を知り、できることから始めることです。

健診でeGFRの低下、クレアチニン高値、尿蛋白、尿潜血などを指摘された方は、健診結果をお持ちください。
数値の意味を一緒に確認し、糖尿病、高血圧症、脂質異常症なども含めて総合的に確認します。

来年の健診でより良い結果につながるよう、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきましょう。

 

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監修医師 加藤 利基
監修医師 加藤 利基
かとうホームクリニック 院長
医学博士 / 名古屋市西区医師会 会長 /
がん治療認定医機構 認定医